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THE SEEDが大阪で起業イベント、セーフィー佐渡島氏やニッセイ・キャピタル上田氏ら心得指南 - BRIDGE(ブリッジ)テクノロジー&スタートアップ情報

THE SEEDが大阪で起業イベント、セーフィー佐渡島氏やニッセイ・キャピタル上田氏ら心得指南 – BRIDGE(ブリッジ)テクノロジー&スタートアップ情報


Image credit: Masaru Ikeda

シード VC の THE SEED は19日、関西地方で学生や若手の起業志望者/VC 志望者/インターン志望者を対象としたイベント「スタートアップ関西」を開催した。THE SEED は東京と京都に活動拠点を置いているが、代表でジェネラルパートナーの廣澤太紀氏が関西出身であることから、このイベントを2018年から年2回(春・秋)の頻度で開催していて今回で9回目。

この日、関西地方は大雨で、起業関連や学生向けイベントと日程が重なっていたものの、会場には100名以上の参加者が集まった。今回のスタートアップ関西は、JR 大阪駅前のイノベーション支援施設「JAM BASE」で開催された。JAM BASE は、うめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」に今年9月に先行開業した施設で、 THE SEED も先ごろ、大阪の活動拠点をここに設置している。

スタートアップ・起業の始め方

Image credit: Masaru Ikeda

最初のセッションは、20代の若手起業家2名によるパネルディスカッションだ。登壇したのは、ゲーム・モバイルアプリ向け広告プラットフォームを展開する AdMel の高橋桃花氏と、金融機関向けの業務効率化支援を手がける One StepS の田山凌汰氏である。二人は共に学生時代から起業を志し、それぞれ独自の道を切り開いてきた起業家だ。モデレーターを務めた THE SEED の宮城圭介氏氏の進行のもと、起業のきっかけから資金調達、若手経営者としての心構えまで、具体的な経験に基づいた話が展開された。

起業への想い、そして、創業資金をどうやって調達するか

高橋氏は、高校生時代に日本政策金融公庫のビジネスコンテストに参加したことが、具体的なビジネスへの入り口となったという。

自分が生きていることで出せる価値を生み出したいとの思いから起業を決意しました。生前葬に興味があって、自分が亡くなる瞬間に、自分が笑顔にさせてあげられた人がどれだけいるかを想像しながら日々生活を送っています。(高橋氏)

一方、田山氏は、率直に「起業はかっこいい」との思いから起業したそうだ。大学在学中のベンチャーキャピタル(VC)でのインターン経験を通じ、起業家たちの生き方や考え方に触れたことが大きな影響を与えた。

起業している人たちの生き方、やっていることがすごくかっこいいと思ったし、自分でも、ひょっとしたら、できるんじゃないかと思ったんです。(田山氏)

AdMel 代表取締役 高橋桃花氏
Image credit: Masaru Ikeda

創業時の資金調達については、二人とも現実的な対応を取っている。高橋氏は、業界の先輩経営者らに事業相談を重ねる中で、投資を受ける機会を得た。「事業を数年、数十年と続けていく上で、ずっとコミュニケーションを取りたいと思える人か」という観点で投資家を選んだという。

田山氏は創業時、同居していた友人から資本金を借り入れてスタートを切った。「当時は750円しかなかった」と振り返りつつ、その後2,500万円の資金調達に成功。投資家選びについては「10年、ひょっとしたら20年とか会社が続く中で、その人たちとパートナーとしてやっていけるか」を重視したと語った。

起業家としての心得

年齢が上の投資家や経営者との関係構築について、2人は「リスペクト」と「信頼構築」を強調した。高橋氏は「とにかく低姿勢で、相手のことをとことん調べた上でお話をしに行く」というアプローチを重視。田山氏は「若い人たちの中で何が求められているか、私たちの価値がどういうところにあるか」を伝えることで、年齢差を超えた関係構築に成功している。

二人は後進へのアドバイスとして、学生時代の具体的な行動指針を示した。高橋氏は接客業のアルバイト経験を強く推奨した。「礼儀とか相手が喜ぶコミュニケーションを学べる」と指摘し、「マニュアルワーク型の経験があることを知ってからでないと、その先の応用も発展もない」と説明した。

OneStepS 代表取締役 田山凌汰氏
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田山氏は大学での人間関係構築の重要性を強調した。「利害関係なしに普通にフラットに仲良くなれる」環境としての大学の価値を指摘し、多様な人々との交流を推奨している。

また、両者とも VC でのインターン経験を持つが、その価値について、高橋氏は「起業家の友達や知り合いが増えたこと」「営業インターンで、たくさん拒絶される経験を積んだことが大きな財産になっている。」と振り返った。田山氏は、「エクイティ調達するまでは責任も限定的なので、自分で会社という経験を持ってみることは勉強になる。」と語り、一早い起業を勧めた。

VC トップが語った、起業と投資の本質

ニッセイ・キャピタル代表取締役 上田宏介氏
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2つ目のセッションでは、ニッセイ・キャピタル代表取締役の上田宏介氏と THE SEED ジェネラルパートナーの廣澤太紀氏が登壇し、VC の役割や投資における重要なポイントについて語った。冒頭、廣澤氏は日本のスタートアップ投資市場について、年間1兆円近い資金のうち、東京が7,000億円弱、関西圏全域で500億円から600億円程度がスタートアップに供給されていて、政府が掲げるスタートアップ5カ年計画では、この金額を10兆円まで伸ばすことを目指していると説明した。

拡大するスタートアップ投資市場

上田氏は、日本生命保険の子会社であるニッセイ・キャピタルの代表として、金融機関系 VC ながら「シード段階からの投資」という特徴的な投資戦略を展開している(一般的に、CVC は実業連携を前提とするため、ミドルステージ以降を対象とすることが多いため)。同社は設立30年以上、ファンド総額1,000億円超の大手 VC だ。

一方、廣澤氏は1992年生まれの32歳。学生時代から VC を志望し、East Ventures や Skyland Ventures を経て、2018年にTHE SEEDを設立。現在は30億円以上のファンドを運用し、約60社に投資している。

THE SEED ジェネラルパートナー 廣澤太紀氏
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上田氏は投資における重要な視点として、「世の中の平均的な考え方との違い」を挙げた。

世の中全体の平均的な考え方をコンセンサスと呼びますが、コンセンサス通りに投資をしている人は絶対勝てません。自分と世の中の平均値との違いを認識し、そこから強みを見出すことが重要です。10社投資したら、うまくいく確率は3社程度。7社は残念ながら投資金額が回収できないようなケースになります。だからこそ、失敗からいかに学ぶかが重要です。(上田氏)

廣澤氏は、創業期の資金調達について、常に先手先手で考えることが重要だと説明した。

仮に2,000万円という大金を調達しても、人を採用してオフィスを借りて事業を始めると、月100万円では抑えられません。普通に考えれば1年後には無くなってしまいます。したがって、いつなくなるから、いつまでに何をしないといけないのか、次の資金繰りについて早い段階から(起業家と)一緒に考えることが、創業投資をする投資家にとっては重要です。(廣澤氏)

成功の鍵は「尽きることのない情熱」

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2人が共に強調したのが「焦って調達しない」という点だ。

資本政策には不可逆性があり、後戻りできません。VC の私がこういうことを言うのも変ですが、調達した後、さて何をやろうみたいなことになるのだったら、絶対調達しない方がいいです。(上田氏)

自分が出資してもらう側だと思わない方がいい。むしろ、投資家に出資機会を提供している、という視点を持った方がいいです。起業家が投資家に頼み込むような構図になっている時点で、VC ファイナンスに触れない方がいいと思います。(廣澤氏)

起業を目指す学生たちへのメッセージとして、2人はバランスの取れたアプローチの重要性を説いた。

情熱は重要です。しんどいことがあっても、何があっても必ずやり遂げるという情熱がないと何もうまくいかなくなります。(上田氏)

最近は、スキルが過大評価され、情熱が過小評価されているように思います。ただ、情熱だけでいいわけではなく、成功には再現性のある部分も存在します。熱い情熱を持っているのであれば、そこにたどり着くような努力をした方がいいと思います。(廣澤氏)

学生起業の未来と課題——成長のために必要な要素とは

セーフィー代表取締役 佐渡島隆平氏
Image credit: Masaru Ikeda

最後のセッションでは、THE SEED の廣澤太紀氏と、クラウド型監視カメラシステム大手のセーフィー(東証:4375)創業者で代表取締役の佐渡島隆平氏が登壇し、学生起業家が直面する現実的な課題や成功に必要な要素について、深い議論が交わされた。佐渡島氏は、自身が大学在学中に経験した際の起業の苦労を振り返り、その際の課題について語った。

廣澤氏は冒頭、学生起業の難しさと現実を率直に語り、「学生起業は魅力的に見えるが、そのまま成功し続けることは簡単ではない」と述べた。若者が新しいアイデアや情熱を持って起業に挑むことは称賛されるが、それを持続させ、黒字化し、スケールさせるためには多くの障壁があることを指摘した。

学生起業の壁

佐渡島氏は学生だった1999年、携帯電話が初めてインターネットに繋がるようになったのを機に、学生向けメディア「daigakunote.com」を立ち上げた。当時、事業の黒字化や拡大が難しく、現在のようにスタートアップ向けの VC も存在しなかったことから、資金調達が困難だったことを強調した。

自分でプログラムを作り、サービスを提供するところまではできましたが、収益を出し、さらにそれを大規模な事業に拡大させる力は当時の自分にはありませんでした。学生時代に起業することで、アイデアを形にする経験は得られたものの、経営者としての力を身に付けるには不十分でした。(佐渡島氏)

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佐渡島氏はこの初期の経験から、起業家としての第一歩の大変さを痛感した。彼はその後、daigakuonote.com を共に創業した他のメンバーに委ね、2002年にソニーネットワークコミュニケーションズに就職することになる。廣澤氏は佐渡島氏に、「学生時代に始めた事業が成功し続け、企業として大きく成長することは可能だったのか」と尋ねた。

もしあのまま学生起業を続けていたとしても、今のセーフィーのような大規模な会社を作り上げることは難しかったと思います。事業をスケールさせるには、適切な時期に適切な支援を受け、情熱を持ち続けることが重要ですが、学生の段階ではその全てを兼ね備えるのは非常に難しい。大きな企業を作り上げるためには、明確なビジョンが必要です。(佐渡島氏)

企業内経験は起業に有利か

佐渡島氏は、ソニーでの就業経験が現在のセーフィーの成功に与えた影響についても語った。彼は、ソニー時代に多くのプロジェクトに携わる中で得たスキルや知識が、後にセーフィーを立ち上げる際に大いに役立ったと説明した。

ソニーに就職したことで、技術的な知識だけでなく、ビジネスの基礎を学ぶことができ、そこでの経験や出会いがその後の起業に大きな影響を与えました。もしソニーに就職していなければ、現在のセーフィーは存在しなかったかもしれません。ソニー時代に出会った多くのエンジニアやビジネスパートナーが、セーフィーを立ち上げる際の重要な仲間となりました。(佐渡島氏)

セーフィーは2014年10月、ソニー木原研究所から、メンバー3人がスピンアウトして作られたモーションポートレートを経て創業したスタートアップだ。創業の際には、ソニーが資金面からも他のリソース面からも多くの支援を提供したことが知られている。セーフィーは2021年10月、東京証券取引所に創業から7年を経て上場を果たした

セーフィーのサービスが、当初は市場に受け入れられるかどうか不透明だったものの、技術的な進化と社会のニーズが合致する未来を信じて突き進みました。起業家には、情熱、ビジョン、そして社会の変化を捉える力が必要だです。リスクを取ることは起業の本質ですが、そのリスクをどう分散し、最終的に撤退するタイミングを見極めることが成功のカギだと思います。(佐渡島氏)

セッション終了後、参加者らは登壇者や他の参加者とネットワーキングを楽しんだ。
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「スタートアップ関西」恒例、胸に貼るタグシール。このシールにより、参加者は起業仲間を見つけやすくなる効果が期待できる。
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スポンサーから提供された薬膳スープカレー。参加者に提供された。
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JAM BASE は、今年9月に JR 大阪駅前にオープンしたばかりのイノベーション支援施設。スタートアップの新たな群集地となることが期待される。
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