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福岡でこれまで開催されてきた Startup Go!Go!と一緒に開催された RAMEN TECH 調査機関や統計によって数値は微妙に異なるものの、日本のスタートアップの数は現在20,000社前後と言われていて、このうち、約3分の1程度は東京に集中しているとされる。東京では、全GDPの1割程度はスタートアップが稼ぎ出しているというから、スタートアップはもはやマイノリティの存在ではなくなってきたことになる。 東京と地方の開きは大きいものの、福岡は東京に続く数のスタートアップを擁しており、その数は数百社から1,000社程度とみられている。福岡ではスタートアップの話題は東京ほど日常ではないかもしれないが、それでも、さまざまな人の努力が相まって、スタートアップにとって重要なマイルストーンであるイグジットのニュースも聞かれるようになった。 日本のGDPのうち地方が占める割合は半分以上であることから、地方にスタートアップを生み出すことが、この国の将来の発展を占うと言っても過言ではない。福岡市は2012年の「スタートアップ都市宣言」以来、12年間にわたりスタートアップエコシステムの構築に取り組んできた。地方都市がスタートアップをどう応援すべきか、先陣を切って実践してきたわけだ。 さまざまなイベントの開催、施設や助成制度の設置などを通じて、スタートアップへの支援に注力する福岡市長の高島宗一郎氏に、これまでの振り返りと、これから必要になることについて、話を聞くことができた。 ――福岡市のスタートアップエコシステムの現状をどのように評価されていますか？ 高島：国内で言えば、東京は別格として、地方のスタートアップエコシステムという点では、福岡市が一番元気だと自負しています。これは、我々が12年間にわたって戦略的に取り組んできた結果だと考えています。 例えば、スタートアップカフェの設置やスタートアップビザの導入、そして「Fukuoka Growth Next」のような官民共働型のスタートアップ支援施設の運営など、さまざまな施策を通じて、起業家が活動しやすい環境を整えてきました。その結果、福岡市におけるスタートアップの設立数や資金調達額は着実に増加しています。 ただし、まだ足りないものがたくさんあり、これからさらに伸ばせるところがあると認識しています。特に、グローバル市場で戦えるユニコーン企業の創出や、より多くの VC の誘致、そして産学連携の強化などが今後の課題だと考えています。 ――12年間の取り組みを振り返って、どのような成果があったとお考えですか？ 高島：福岡市のスタートアップ政策には、「高さ（編注：スタートアップのスケーラビリティの可能性。例えば、ユニコーンになれるか、など）」と「ソーシャル」という二つの大きな柱があります。この12年間、特にソーシャルの面では非常に大きな成果があったと評価しています。 具体的には、多種多様なソーシャルスタートアップが生まれ、社会課題の解決に向けた革新的なサービスが次々と登場しています。例えば、高齢者の見守りサービスや、食品ロス削減のためのシェアリングプラットフォーム、さらには地域コミュニティを活性化するためのアプリケーションなど、市民の生活に直接的な影響を与える事業が多く生まれています。 また、クラウドファンディングやふるさと納税の仕組みを活用した新しい形の資金調達方法も、福岡市が先駆的に取り入れてきました。これにより、従来の方法では実現が難しかったプロジェクトにも光が当たるようになり、イノベーションの裾野が大きく広がったと感じています。 ――これまでの取り組みの現在地について、どのようにお考えですか？ 高島：これまでの12年間、我々は常に「足りないものは何か」というニーズに基づいて、必要なものを供給してきました。地方都市である福岡は、そもそも、ヒト・モノ・カネ共に「ないないづくし」の状態でしたから、当に裾野のところから始める必要がありました。 例えば、「スタートアップとは何か」「働くとは何か」といった基本的なことから、サービスをブラッシュアップする方法や、会社としてどう経営していくのかといった実践的な内容まで、さまざまなセミナーやイベントを開催してきました。これは、単にスキルを教えるだけでなく、起業家精神や挑戦する姿勢を醸成するためでもありました。 また、「自分でビジネスを立ち上げることがカッコいい」「チャレンジすることは前向きなこと」といった意識を広めるための取り組みも行ってきました。例えば、成功した起業家を学校に招いて講演してもらったり、学生向けのビジネスプランコンテストを開催したりしています。 これらの取り組みの結果、ようやく、イグジットの事例も含めて、成功事例が少しずつ出てきている段階だと感じています。イグジットの事例は、次の世代の起業家たちにとっての道標になっています。 ――さまざまなイベントやプログラムを実施してきた中で、今後さらに必要なものは何だとお考えですか？ 高島：今後、特に重要になってくるのはグローバル展開だと考えています。コロナ禍が終息し、世界経済が再び活性化する中で、福岡のスタートアップも本格的にグローバル市場を目指す時期に来ています。 そのために必要なのは、まず人材です。地方都市である福岡では、グローバルな経験を持つ人材や、特定の専門分野に精通した人材が不足しています。これを補うために、今回のようなイベント（編注：StartupGo!Go!や RAMEN TECH）を通じて、アジアのスタートアップエコシステムとも繋がっていくことが大切です。 また、よりハングリーな姿勢も重要です。日本市場だけでなく、急成長するアジア市場やグローバル市場で戦っていくためには、より大きな志とチャレンジ精神が必要です。そのためには、成功事例やロールモデルとの出会い、そしてライバルとの切磋琢磨が不可欠です。そんな機会も、こういったイベントを通じて提供していきたいと考えています。 さらに、資金面でのサポートも重要です。VC（ベンチャーキャピタル）や、実際にお金を供給し、ネットワークを持っている人たちとの繋がりを強化する必要があります。特に、シリーズ B やそれ以降の大型調達を可能にするような環境整備が必要だと考えています。 これらの要素を総合的に強化することで、グローバルを狙うスタートアップにとって、福岡が最適な拠点となることを目指しています。 ――課題はどのようなところにありますか？ 高島：最大の課題は、「高さ」、つまり急成長する大型スタートアップの創出という点です。東京のような大都市では、豊富な人材と資金が集中しているため、急成長でお金が一気に入ってくるスタートアップが生まれやすい環境があります。 一方、福岡を含む地方都市では、そういった環境が整っていません。例えば、シリーズ C 以降の大型資金調達や、グローバル展開のための人材確保、大企業とのパートナーシップ構築などが課題となっています。 この「高さ」を満たすブレークスルーの一つとして、グローバル展開があると考えています。日本市場だけでなく、アジアやグローバル市場に進出することで、より大きな成長機会を掴むことができます。そのためには、先ほど述べたような人材や資金の問題を解決する必要があります。 また、産学連携の強化も重要な課題です。福岡には優れた大学が多くありますが、その研究成果を十分にビジネスに活かしきれていない面があります。大学発のディープテック・スタートアップを増やし、技術シーズを事業化する仕組みをさらに強化していく必要があります。 本誌インタビューに応じてくれた福岡市長の高島宗一郎氏 ――グローバル化への取り組みについて、具体的に教えてください。 高島：大きく三つの柱で進めています。 一つ目は、今回のイベントのように、アジアからスタートアップや投資家、企業を福岡に集めることです。これにより、福岡のスタートアップが直接グローバルなプレイヤーと交流し、ビジネスチャンスを掴む機会を提供しています。 二つ目は、福岡のスタートアップの海外展開支援です。例えば、シリコンバレーやシンガポールなどの主要なスタートアップハブに、福岡市が支援するインキュベーション施設を設置しています。これにより、福岡のスタートアップが比較的低リスクで海外展開にチャレンジできる環境を整えています。 三つ目は、グローバル人材の育成と誘致です。地元の大学と連携して、起業家教育やグローバルビジネス教育を強化するとともに、海外の優秀な人材を福岡に惹きつけるための施策も実施しています。例えば、スタートアップビザの発行や、外国人向けのワンストップ支援センターの設置などがその例です。 これらの取り組みを通じて、グローバルなメンバーと一緒にグローバル市場を狙うスタートアップが徐々に生まれてきています。今後も、こういったイベントや支援策を通じて、福岡のスタートアップの成長のためのピースをしっかり埋めていければと思っています。 ――スタートアップ支援を経済政策の柱に据える都市も増えてきました。先頭を走る他の都市との連携についてはどのようにお考えですか？ 高島：地方は東京一極集中の影響で、単独では人材や企業数、VC、資金など、あらゆる面で不足しています。そのため、都市間連携が非常に重要だと考えています。 特に九州は地理的にもまとまりやすいので、「STARTUP KYUSHU」というイベントを通じて、都市間の連携を促進しています。このイベントでは、九州各県のスタートアップや支援機関が一堂に会し、情報交換や協力関係の構築を行っています。 例えば、ある都市に優れた工学系の大学があり、別の都市に金融機関が集積しているといった場合、それぞれの強みを活かした連携が可能になります。また、各都市の成功事例や失敗事例を共有することで、効率的にエコシステムを発展させることができます。 […]